旅先の癒やしはここに――ある男の大浴場体験(フィクションです)
「やれやれ、今日は長崎観光で疲れたなぁ。坂も多いし、もう足パンパンだよ……」
つぶやきながら、男はホテルのロビーに足を踏み入れた。
長崎の町並みは確かに美しい。しかしその美しさには、傾斜という試練がついてくる。
会社の同僚たちは口を揃えてバスやタクシーの利用を勧めてくれたが、そんな“楽”を選ぶのは、男の流儀に反する。
旅とは、自分の足で感じ、自分の目で確かめるものだ。
だからこそ、どれほど足が悲鳴を上げようと、今日一日、男は歩きとおした。
ふと思い出す。
「そういえば、今日泊まるホテルには大浴場があったな……」
今回の宿は、長崎市中央橋にある「ホテルエイチツー長崎」。
出張帰りの上司に教えてもらった宿で、「あそこの大浴場、マジで良かったぞ」と、珍しく熱っぽく語っていたのを思い出す。どうやら、評判以上に期待してよさそうだ。
時刻は16時。チェックインを済ませたばかりの男は、少しベッドに体を預けたのち、大浴場へと足を向ける。
スリッパを脱ぎ、静かな更衣室に入る。鍵付きのロッカーが整然と並んでいて、セキュリティも万全。細やかな気配りに、すでに気持ちはほぐれ始めていた。

ロッカーの扉を閉じ、浴場へ向かうと、大きなガラス窓の向こうに長崎の街並みと港が広がっていた。
観光で歩いた風景を、今度は静かに眺めるという贅沢――ホテルの演出だろうか、なんとも粋な計らいだ。

浴場の扉を開けると、柔らかな湯気が肌に触れた。
シャワーブースに向かうと、そこには「ReFa」の文字が刻まれたシャワーヘッド。よくわからないが、高級感が漂っている。
使い心地の良いシャンプーとボディソープに身をゆだねていると、不思議と心まで洗われていくような気がした。

内湯は広々としており、露天風呂や寝湯も完備されている。長い坂道に悲鳴を上げた足腰が、じんわりと湯に包まれ、力を抜いていくのがわかる。
雲ひとつない青空を見上げながら、ただ静かに息を整える時間。これ以上の癒やしがあるだろうか。



湯から上がると、洗面スペースには最低限のアメニティがそろっていた。
綿棒、ティッシュ、そしてドライヤー――ここにも「ReFa」のロゴ。
見るからにコンパクトなそのドライヤーは、スイッチを入れた瞬間、勢いよく風を吹き出した。
「熱くない……?」
風の温度は低いのに、髪はしっかりと乾いていく。
どうやら、風量で乾かすタイプの最新型らしい。小さなボディからは想像できないパワーに、少し感心してしまった。


使い終えたタオルを返却口に入れ、再び外へ。
エレベーター前の窓から見える長崎の街が、昼間の喧騒とは打って変わり夜の帳にしっとりと沈んでいる。

「少し入りすぎたかもしれないな。……あれは、飲み屋街かな」
そうつぶやきながら男は笑う。
大浴場は深夜2時まで営業しているらしい。夜の街を少し歩いたら、もう一度戻って、今度は星空でも眺めながら湯に浸かるとしよう。
旅先の癒やしは、こんなふうにふとしたところにあるのかもしれない。
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11F大浴場営業時間
営業時間|5:00~10:00 16:00~26:00


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